『三月の波』という詩

ある作家さんと、その母親とで書かれた、実話を元にした、未発表の詩です。

3.11の津波で失った、大切な父親へ向けられた言葉で、紡がれています。

東日本大地震から、10年。

いまだ、哀しみは癒えなくとも、ふと感じられる、あの日の面影。

貴方の大切な人も、きっと、そばで寄り添っていることでしょう。

そう、誰かの心へ届けられたらと、ここに掲載します。

 

「三月の波に 攫われたのは

 海を愛する 無口な父よ

 私を叱る 震えた拳

 振り翳すたび 共に泣いたね

 繰り返す波の 潮騒きけば

 今では私 一人泣くのよ


 三月の波に 連れ去られたの

 海を愛した 大事な父よ

 貴方を探し 裸足で駆ける

 砂に足跡 残しては消え

 終わらない波の 響き哀しく

 貴方の声に 似ているようで


 あの時の波は 戻らないけど

 貴方忘れぬ 私はここよ」