脚本家B先生の毒白

脚本家として活躍されたB先生。

惜しまれながら数年前に引退。

B先生とは色んな話をした。

温和な雰囲気のB先生。

だがしかし。

腹は白いと言い切れない。


B先生は売れない役者を集めて話すのが好きだった。

一見すれば応援しているように見えた。

売れない役者がB先生に縋りつく様子をいつも目の当たりにしていた。


B先生と街中を歩いている時のこと。

こんな話をしてくれたことがある。

脚本家ならではの視点かもしれない。


「あの役者達どうせ売れないんだから辞めればいいのに」

「え?!……それはB先生から助言してはどうでしょう?」

「面白いから放っておこう」

「えっ?!面白い!?」

「頑張れって言っとけばいつか売れると思ってるんだから見ものじゃない」

「ええっ!?!?」

「必死になってるの見とこうよ」

「……!!」


こう言って微笑んだ。

本末転倒だと思った。

しかしながら。

夢を追い続けるのも生きる術。

B先生は本当は優しいのか酷いのかわからない。

だけどあの日のあの言葉は毒白だった。

なんだか面白いようで怖い気もした。

これまで誰にも言わなかった。

今は役者の生き残りが大変な時期だからB先生の毒白を敢えて載せてみた。

続けるのは大事だけど引き際を見失ってはもっと惨めだから。

これは酷いようで優しさのつもり。


毒白。

毒を吐く。

告白や独白。

これらを混ぜたB先生の言葉。